土曜日が一周年を迎へた


眠っている犬を見ると落ち着く
おなかのまわりのふかふかの毛並みがぽっかり浮かぶ雲みたい
雲の真似して山の中腹をぷかぷか浮いてみたい
いつも嫉妬ばかりしていたヘラが、うんとおめかししてゼウスの前に現れた回を思い出す。
あのあとふたりは愛し合って、ぷかぷか浮かびながら気持ちよく眠るのだ

何にも触れない感覚はどんなだろう
小さな頃、本棚の上に乗って飛び降りた
何度も何度も飛び降りた
お母さんに床が抜けると叱られた
学校の舞台からも飛び降りた
思ったよりも舞台は高くって、足がじんとした
何にも触れない感覚はドキドキする
自分に見合った速さで地面に吸い込まれる
あのほんの瞬間は、少し怖い
だから鳥は翼を使う
慣れたトンビは上手に落ちる
足がじんとしないように
怖い思いをしないように
ぷかぷか浮かぶ飛行船は誰でも乗れるわけじゃないし、ヘリウムガスでぱんぱんの風船はどこまで上がっていくんだろう

何にも触れず、ただそよ風だけを感じたいだけ
地面に吸い込まれることなく、足がじんとすることもない
やさしくて、お昼寝の夢みたいに気持ちが良くてあたたかい
眠っている犬を見ると落ち着く
おなかのまわりのふかふかの毛並みを見ると実はほんの少し浮かんでいるようでそこには小さな神様が眠っていた